「パートだから失業保険はもらえないんじゃないかな」と思っている方、実はそれ大きな誤解かもしれません。パートやアルバイトであっても、一定の条件を満たしていれば失業保険(雇用保険の基本手当)を受け取ることができます。
この記事では、パートで働いていた方が失業保険を受給するための条件や、実際にいくらもらえるのかの計算方法、申請の流れまで詳しく解説します。退職を考えている方や、すでに退職したパートの方はぜひ参考にしてください。

パートでも失業保険はもらえるの?基本的な仕組み
失業保険の正式名称は「雇用保険の基本手当」です。この制度は正社員だけのものではなく、雇用保険に加入していた方なら、パートやアルバイトでも受給できる可能性があります。
雇用保険の加入条件は以下の2つです。
- 1週間の所定労働時間が20時間以上であること
- 31日以上の雇用見込みがあること
つまり、週20時間以上働いていたパートの方は、雇用保険に加入していた可能性が高いということです。給与明細を確認して「雇用保険料」が天引きされていれば、加入していたことが分かります。
なお、雇用保険料はごく少額(給与の0.5〜0.55%程度)なので、天引きされていても気づかない方も少なくありません。まずは手元の給与明細を確認してみてください。
給与明細は、このあと紹介する受給額の計算でも使います。直近6ヶ月分をクリアファイルにまとめておくと、計算やハローワークでの確認がスムーズです。
パートが失業保険を受給するための3つの条件
雇用保険に加入していたとしても、失業保険を受給するにはさらにいくつかの条件を満たす必要があります。
条件1:被保険者期間が一定以上あること
離職日以前の2年間に、被保険者期間が通算して12ヶ月以上あることが条件です。ただし、会社都合で退職した場合や、正当な理由のある自己都合退職(契約更新を断られた場合など)の場合は、離職日以前1年間に6ヶ月以上の被保険者期間があれば受給できます。
「被保険者期間」とは、賃金支払基礎日数が11日以上ある月のことを指します。パートでも月に11日以上出勤していれば、1ヶ月としてカウントされます。
条件2:失業の状態にあること
「失業の状態」とは、「就職する意思と能力があるにもかかわらず、就職できていない状態」のことです。単に退職したというだけでなく、積極的に求職活動を行っていることが求められます。家事に専念したいという理由では受給できませんので注意してください。
条件3:ハローワークで求職の申し込みをしていること
失業保険を受給するには、ハローワークに出向いて求職の申し込みを行い、求職活動を継続する必要があります。4週間に1度の失業認定日に、求職活動の実績を報告することも求められます。
「パートだからもらえない」ということはありません。重要なのは、雇用保険に加入していたかどうか、そして被保険者期間が条件を満たしているかどうかです。離職票で確認できますので、退職時に会社から受け取りましょう。届かない場合はハローワークに相談すれば対応してもらえます。
パートの失業保険はいくらもらえる?計算方法を解説
気になるのは「実際にいくらもらえるのか」ですよね。失業保険の受給額は、退職前の給与をもとに計算されます。
基本手当日額の計算方法
まず、「賃金日額」を計算します。これは離職前6ヶ月間の給与の合計額を180で割った金額です。
賃金日額 = 離職前6ヶ月間の給与合計 / 180
次に、賃金日額に給付率を掛けて「基本手当日額」を算出します。給付率は賃金日額の水準によって異なり、おおむね50%から80%の範囲です。賃金日額が低い方ほど給付率は高くなる仕組みになっています。これはパートなど低賃金の方が生活に困りやすいことへの配慮です。
パートの受給額シミュレーション
具体的な金額をイメージしやすいよう、パートの方の受給額をシミュレーションしてみましょう。
例1:月収10万円のパートの場合
- 離職前6ヶ月の給与合計:60万円
- 賃金日額:60万円 / 180 = 約3,333円
- 基本手当日額:賃金日額 x 給付率(約80%)= 約2,667円
- 自己都合退職で90日分の場合:約2,667円 x 90日 = 約24万円
例2:月収15万円のパートの場合
- 離職前6ヶ月の給与合計:90万円
- 賃金日額:90万円 / 180 = 5,000円
- 基本手当日額:賃金日額 x 給付率(約70%)= 約3,500円
- 自己都合退職で90日分の場合:約3,500円 x 90日 = 約31.5万円
例3:月収8万円のパートの場合
- 離職前6ヶ月の給与合計:48万円
- 賃金日額:48万円 / 180 = 約2,667円
- 基本手当日額:賃金日額 x 給付率(約80%)= 約2,133円
- 自己都合退職で90日分の場合:約2,133円 x 90日 = 約19.2万円
なお、基本手当日額には下限額が設定されており、2025年8月改定後は全年齢で2,411円です(毎年8月に改定されます)。パートの方の場合、この下限に近い金額になることもあります。
自分の場合の目安を知りたいときは、給与明細と電卓を用意して上の式に当てはめてみると、おおよその金額がつかめます。正確な金額はハローワークで確認してください。

給付日数はどれくらい?パートの場合の目安
失業保険の給付日数は、退職理由と被保険者期間、年齢によって決まります。パートの方に多い自己都合退職の場合を見てみましょう。
自己都合退職の場合
- 被保険者期間1年以上10年未満:90日
- 被保険者期間10年以上20年未満:120日
- 被保険者期間20年以上:150日
会社都合退職(特定受給資格者)の場合
会社都合の場合は年齢と被保険者期間に応じて90日から330日まで幅広く設定されています。一般的に自己都合よりも手厚い給付を受けられます。パートの方でも、雇い止め(契約更新を断られた場合)は「特定理由離職者」として、会社都合に近い扱いを受けられることがあります。
自己都合退職の場合は、7日間の待機期間に加えて原則1ヶ月の給付制限期間があります(2025年4月の法改正により、従来の2ヶ月から短縮されました)。この間は基本手当を受け取ることができません。会社都合退職の場合は、7日間の待機期間の後すぐに支給が始まります。生活費の準備は忘れずに行いましょう。
扶養内パートの場合はどうなる?注意すべきポイント
配偶者の扶養に入っている方が退職した場合も、失業保険の受給条件を満たしていれば受給できます。ただし、いくつか注意点があります。
- 失業保険の基本手当日額が3,612円以上の場合、受給中は社会保険の扶養から外れる可能性があります(年収130万円の壁に抵触するため)
- 扶養から外れた場合は、国民健康保険と国民年金に自分で加入する必要があり、その保険料負担が発生します
- 受給が終了した後は、要件を満たせば再び扶養に入ることができます
- 扶養を外れる手続きは配偶者の会社を通じて行うことになります
扶養内で働いていた方は、失業保険を受給するかどうかで社会保険の負担が変わりますので、事前にシミュレーションしてから判断することをおすすめします。受給額と保険料負担を比較した上で、トータルでプラスになるかどうかを考えましょう。
パートが失業保険を申請する手順
ここからは、実際にパートの方が失業保険を申請する具体的な手順を解説します。
ステップ1:離職票を受け取る
退職後、会社から「離職票」が届きます。通常は退職後10日から2週間程度で届くことが多いですが、届かない場合は元の勤務先に催促するか、ハローワークに相談しましょう。離職票は失業保険の申請に欠かせない重要な書類です。
ステップ2:ハローワークで求職の申し込み
住所地を管轄するハローワークに行き、以下の書類を持参して求職の申し込みを行います。
- 離職票(1と2の両方)
- マイナンバーカードまたはマイナンバー通知カード+身分証明書
- 証明写真2枚(縦3cm x 横2.4cm)
- 本人名義の通帳またはキャッシュカード
- 印鑑
離職票や、このあと交付される受給資格者証・失業認定申告書は、認定日のたびに持っていく書類です。1冊のファイルにまとめておくと、忘れ物を防ぎやすくなります。
ステップ3:受給説明会に参加
求職申し込み後、ハローワークが開催する受給説明会に参加します。ここで雇用保険受給資格者証と失業認定申告書が交付されます。受給の流れやルールについて説明を受けますので、しっかり聞いておきましょう。
ステップ4:失業認定日にハローワークへ
4週間に1度の失業認定日にハローワークに出向き、求職活動の実績を報告します。認定を受けると、その後約1週間で指定の口座に基本手当が振り込まれます。

失業保険をもらえないパートのケースとは?
残念ながら、以下のようなケースでは失業保険を受給できません。
- 週20時間未満の勤務で雇用保険に加入していなかった場合
- 被保険者期間が12ヶ月(会社都合の場合は6ヶ月)に満たない場合
- すぐに働く意思がない場合(ただし病気・出産・育児などの場合は受給期間の延長手続きが可能)
- すでに次の仕事が決まっている場合(再就職手当の対象になる可能性あり)
ただし、病気や出産、育児、介護などですぐに働けない場合は、受給期間の延長手続きを行うことで、最大4年間まで受給期間を延ばすことができます。「今は働けないけど将来は復帰したい」という方は、延長手続きを忘れずに行いましょう。
Q&A:パートの失業保険でよくある質問
Q. 雇用保険に入っていたかどうか分からない場合は?
給与明細で「雇用保険料」の控除があるか確認してください。分からない場合はハローワークに問い合わせれば、加入状況を調べてもらえます。マイナンバーカードがあればスムーズに確認できます。
Q. 掛け持ちパートの場合、両方から失業保険はもらえる?
雇用保険は原則として1つの事業所でしか加入できません。複数のパートを掛け持ちしていた場合、雇用保険に加入していた事業所の離職票をもとに申請することになります。掛け持ち先すべてを退職していることが受給条件になります。
Q. パートの失業保険受給中にアルバイトはできる?
1日4時間未満の短時間労働であれば、収入に応じて減額されますが受給は続けられます。4時間以上働いた日は「就業した日」として、その日の分は不支給になります。ただし、働いた日数や収入は失業認定申告書に記載して申告することが必須です。無申告は不正受給に該当しますので、気をつけてください。
Q. 離職理由が「自己都合」だけど「会社都合」にできない?
パワハラや契約条件の相違、大幅な残業などが退職理由の場合は、ハローワークで事情を説明すれば「特定受給資格者」や「特定理由離職者」に認定される可能性があります。離職票の退職理由に納得がいかない場合は、ハローワークの窓口で相談してみてください。
まとめ
パートであっても、雇用保険に加入していた方なら失業保険を受給できる可能性は十分にあります。週20時間以上の勤務で雇用保険に加入しており、被保険者期間が12ヶ月以上あることが基本的な条件です。
受給額は退職前の給与に基づいて計算され、パートの方でも数十万円を受け取れるケースは少なくありません。「自分には関係ない」と思わずに、まずは離職票を確認し、ハローワークで相談してみてください。もらえるお金をしっかり受け取って、次のステップに向けて安心して準備を進めましょう。

参考:ハローワーク公式サイト | 厚生労働省 雇用保険制度 | freee 失業保険の解説


