退職後に障害を抱えている場合、生活を支えるためのさまざまな福祉制度が用意されている。しかし、制度が多すぎて何を使えばいいのか分からないという声も多い。この記事では、退職後に活用できる障害者福祉制度を「就労支援」「医療費助成」「生活支援」「経済的支援」の4つの分野に分けて、分かりやすく解説する。

退職後に使える就労支援制度
退職後の再就職に向けて、障害のある方が利用できる就労支援制度は複数ある。
就労移行支援
就労移行支援は、一般企業への就職を目指す障害者向けの訓練プログラムだ。利用期間は原則2年間で、ビジネスマナーやPCスキル、面接練習などのサポートが受けられる。
- 対象:18歳以上65歳未満の障害のある方
- 費用:原則1割負担(前年の所得による減免あり)
- 利用期間:原則2年間
- 利用には障害者手帳または医師の意見書が必要
就労継続支援A型
就労継続支援A型は、雇用契約を結んで働く場所だ。最低賃金以上の給与が支払われるため、働きながら収入を得られるのが特徴だ。一般企業での就労が難しいが、サポートがあれば働ける方に向いている。
就労継続支援B型
就労継続支援B型は、雇用契約を結ばずに働く場所だ。A型よりも負担が軽く、自分のペースで作業に取り組める。工賃(報酬)は最低賃金を下回ることが多いが、体調に合わせて通所できるメリットがある。
ハローワークの障害者専門窓口
ハローワークには障害者の就職を専門に支援する窓口がある。障害者求人の紹介だけでなく、職業相談や適性検査なども受けられる。障害者手帳を持っていなくても相談は可能だ。
就労移行支援は「就職するための準備」、就労継続支援は「働く場所の提供」と覚えておこう。自分の体調や目標に合わせて選ぶのが大切だ。
医療費助成制度
障害があると通院の頻度が高くなりがちだ。医療費の負担を軽くするための制度を確認しよう。
自立支援医療(精神通院医療)
精神疾患で通院している場合、自立支援医療を利用すれば医療費の自己負担が原則1割になる(通常は3割負担)。うつ病、統合失調症、発達障害、てんかんなどの精神疾患が対象だ。
- 申請先:市区町村の障害福祉課
- 必要書類:申請書、医師の診断書、保険証、マイナンバー確認書類
- 有効期限:1年間(毎年更新が必要)
申請書の控えや診断書のコピー、届いた受給者証などは1冊のファイルにまとめておくと、毎年の更新や別の窓口での手続きのときに探さずに済む。
自立支援医療(更生医療)
身体障害者手帳を持つ18歳以上の方が、障害の軽減・除去のための医療を受ける場合に、医療費の自己負担が軽減される制度だ。
重度障害者医療費助成
自治体が独自に実施している制度で、重度の障害がある方の医療費自己負担分を助成する。対象となる障害の等級や所得制限は自治体によって異なるため、お住まいの市区町村に確認しよう。

生活支援制度
障害福祉サービス受給者証
障害者総合支援法に基づく福祉サービスを利用するには、市区町村に申請して「受給者証」を取得する必要がある。受給者証があれば、以下のようなサービスを利用できる。
- 居宅介護(ホームヘルプ):自宅での入浴・排せつ・食事の介護
- 同行援護・行動援護:外出時の移動支援
- 短期入所(ショートステイ):一時的な施設利用
- 共同生活援助(グループホーム):共同生活の場での支援
地域活動支援センター
地域活動支援センターは、障害のある方が日中に通所して、創作活動や生産活動、社会交流を行う場所だ。利用料が無料または低額のことが多く、社会とのつながりを保つ場所として活用できる。
相談支援事業所
福祉制度の利用について相談できる窓口だ。どの制度を使えばいいか分からない場合は、まず相談支援事業所に連絡してみよう。サービス等利用計画の作成や、関係機関との調整も行ってくれる。
経済的支援制度
障害年金
障害年金は、病気やケガによって日常生活や仕事に支障がある場合に支給される年金だ。
- 障害基礎年金:1級は年間約106万円、2級は年間約85万円(2026年度の目安)
- 障害厚生年金:在職中に初診日がある場合に加算される
障害年金は障害者手帳がなくても申請可能だが、審査基準が厳しいため、社会保険労務士に相談することをおすすめする。
特別障害者手当
20歳以上で、精神または身体に著しく重度の障害があり、日常生活において常時特別の介護を必要とする在宅の方に支給される手当だ。
生活保護
障害があり、収入が最低生活費を下回る場合は生活保護の申請が可能だ。障害者加算が適用されるため、一般の方より多い金額が支給される。
各制度には所得制限や障害等級の要件がある。自分が対象かどうかは、市区町村の障害福祉課や相談支援事業所で確認しよう。
退職後に障害者手帳を取得する流れ
障害者福祉制度の多くは、障害者手帳の取得が入り口になる。退職後に手帳を取得する場合の基本的な流れを確認しておこう。
精神障害の場合は精神障害者保健福祉手帳、身体障害の場合は身体障害者手帳を申請する。いずれもお住まいの市区町村の障害福祉課が窓口だ。精神障害者保健福祉手帳は初診日から6ヶ月以上経過していれば申請でき、審査には2〜3ヶ月程度かかる。
手帳がなくても利用できる制度(自立支援医療など)もあるため、手帳の交付を待つ間に並行して他の制度を申請しておくと効率的だ。
制度を利用するための第一歩
これだけ多くの制度があると、どこから手をつければいいか迷うかもしれない。以下のステップで進めるのがおすすめだ。
- ステップ1:主治医に現在の症状と利用できそうな制度について相談する
- ステップ2:市区町村の障害福祉課窓口で「利用できる制度の一覧」を聞く
- ステップ3:相談支援事業所に連絡して、制度の利用計画を立ててもらう
- ステップ4:必要な手帳や受給者証の申請手続きを進める
いくつかの申請を並行して進めるときは、申請した日や結果が届く目安、窓口で聞いたことを手帳に日付つきで書き留めておくと管理しやすい。

よくある質問(Q&A)
Q. 障害者手帳がないと福祉制度は使えない?
手帳がなくても利用できる制度はある。例えば、自立支援医療は医師の診断書があれば申請可能だし、障害年金も手帳の有無とは別の審査基準がある。ただし、障害者雇用枠での就職や税金の控除は手帳が必要だ。
Q. 退職後すぐに制度を利用できる?
制度によって異なる。自立支援医療は比較的早く利用開始できるが、障害者手帳は申請から交付まで2〜3ヶ月、障害年金は審査に3ヶ月以上かかることもある。早めの申請を心がけよう。
Q. 複数の制度を同時に利用できる?
複数の制度を併用することは可能だ。例えば、自立支援医療を使いながら障害年金を受給し、就労移行支援に通うこともできる。それぞれの制度には独立した申請が必要なので、漏れなく申請しよう。
Q. 障害年金と失業保険は同時に受給できる?
障害年金と失業保険(雇用保険の基本手当)は同時に受給できる。両方の受給条件を満たしていれば、どちらか一方を選ぶ必要はない。ただし、障害年金と傷病手当金を同時に受給する場合は、傷病手当金が減額されることがある。
Q. 制度の手続きが一人では難しい場合はどうすればいい?
市区町村の障害福祉課窓口や相談支援事業所に相談すれば、手続きのサポートを受けられる。社会福祉士や精神保健福祉士などの専門スタッフが、申請書類の書き方から制度の選び方まで一緒に考えてくれる。家族が代理で手続きすることも可能だ。
まとめ
退職後に障害を抱えている場合、活用できる福祉制度は多岐にわたる。
- 就労支援:就労移行支援・就労継続支援A型/B型・ハローワーク障害者窓口
- 医療費助成:自立支援医療・重度障害者医療費助成
- 生活支援:居宅介護・グループホーム・地域活動支援センター
- 経済的支援:障害年金・特別障害者手当・生活保護
制度を知っているかどうかで、退職後の生活は大きく変わる。まずは市区町村の障害福祉課か相談支援事業所に相談するところから始めてみよう。
参考:厚生労働省 – 自立支援医療制度の概要 東京都福祉局 – 自立支援医療|障害者総合支援法 就労移行支援の保健室 – 障害者手帳で受けられるサービス一覧


