定年退職を控えている方にとって、「手続きが多すぎて何から手をつければいいかわからない」というのは共通の悩みです。健康保険、年金、税金、雇用保険と、やるべきことが山積みで不安になりますよね。
でも安心してください。定年退職の手続きは、時系列に沿って進めていけば漏れなく完了できます。大切なのは「いつ」「何を」やるかを事前に把握しておくことです。
この記事では、定年退職前から退職後までに必要な手続きを、チェックリスト形式でわかりやすくまとめました。期限のある手続きも多いので、ぜひブックマークして活用してください。

定年退職前にやること【退職3ヶ月〜1ヶ月前】
定年退職が近づいてきたら、まずは退職前にやるべきことを確認しておきましょう。この段階での準備が、退職後のスムーズな手続きにつながります。
就業規則と退職金制度を確認する
最初に会社の就業規則で、定年退職に関するルールを確認しましょう。退職金の支給時期、再雇用制度の有無、退職日が誕生日なのか月末なのかなど、会社によって対応が異なります。
退職金は確定申告が必要なケースもあるため、支給額の見込みと課税方法も確認しておくと安心です。退職金にかかる税金は「退職所得の受給に関する申告書」を提出しているかどうかで大きく変わります。
健康保険の選択肢を比較する
退職後の健康保険は、主に3つの選択肢があります。
| 選択肢 | 概要 | 加入期限 |
|---|---|---|
| 任意継続被保険者 | 退職前の健康保険を最長2年間継続 | 退職日の翌日から20日以内 |
| 国民健康保険 | 市区町村の国民健康保険に加入 | 退職日の翌日から14日以内 |
| 家族の扶養 | 配偶者や子どもの健康保険の扶養に入る | できるだけ早く |
任意継続は退職前の保険料の全額自己負担(会社負担分も含む)となるため、国民健康保険と比較してどちらが安いか事前にシミュレーションしておきましょう。市区町村の窓口で国保の保険料を試算してもらうこともできます。
年金の受給手続きについて調べる
年金の受給開始年齢に達している場合は、年金請求書の提出が必要です。年金は申請しなければ受け取れない仕組みなので、この手続きは絶対に忘れないようにしましょう。
「ねんきんネット」に登録しておくと、自分の年金見込額をいつでも確認できます。繰下げ受給を検討している場合は、受給開始時期による増額率も比較しておくとよいでしょう。
住民税の支払い方法を確認する
会社員の間は住民税が給与から天引き(特別徴収)されていますが、退職後は自分で納付する普通徴収に切り替わります。退職時期によっては一括徴収される場合もあるため、会社の経理に確認しておきましょう。
1月〜5月に退職する場合は、5月分までの住民税が最後の給与から一括徴収されます。手取りが大幅に減る可能性があるため、事前に把握しておきましょう。
財形貯蓄や持株会の手続き
会社で財形貯蓄や従業員持株会に加入している場合は、退職に伴う解約や払い出しの手続きが必要です。財形住宅貯蓄や財形年金貯蓄は、目的外の払い出しをすると課税されるケースがあるため、事前に確認しておきましょう。

退職日当日にやること
退職日には、会社に返却するものと受け取るものの最終確認を行います。忘れ物があると後から郵送でのやり取りが必要になるため、事前にチェックリストを用意しておくのがおすすめです。
会社に返却するもの
- 健康保険被保険者証(扶養家族分も含む)
- 社員証・IDカード・入館証
- 名刺(取引先からもらったものも含む)
- 通勤定期券
- 制服・作業着
- 会社貸与のパソコン・スマートフォン
- 業務に関する書類・データ
- 鍵・セキュリティカード
会社から受け取るもの
- 離職票(退職後10日程度で届く場合が多い)
- 雇用保険被保険者証
- 年金手帳(会社保管の場合)
- 源泉徴収票
- 退職証明書(必要に応じて)
- 健康保険資格喪失証明書
離職票は退職日当日にはもらえないことが多いです。後日郵送になるケースがほとんどなので、届く時期を事前に確認しておきましょう。届かない場合はハローワークに相談できます。
退職後にやること【退職後1〜2週間以内】
退職後は期限のある手続きが集中します。特に健康保険と年金の切り替えは14日以内が目安です。計画的に動きましょう。
健康保険の切り替え
任意継続を選ぶ場合は、退職日の翌日から20日以内に健康保険組合(または協会けんぽ)に手続きを行います。国民健康保険を選ぶ場合は、市区町村の窓口で退職日の翌日から14日以内に手続きします。
手続きに必要なものは以下の通りです。
- 健康保険の資格喪失証明書(会社から発行)
- 本人確認書類(マイナンバーカードまたは運転免許証)
- マイナンバーがわかるもの
- 印鑑
国民年金への切り替え
再就職しない場合は、厚生年金から国民年金への切り替え手続きが必要です。市区町村の窓口で、退職日の翌日から14日以内に手続きしましょう。
60歳以上で年金受給を開始する場合は、年金事務所で年金請求の手続きを行います。年金の請求は受給開始年齢の誕生日の前日以降に行えるため、タイミングを逃さないようにしてください。
雇用保険の手続き
再就職の意思がある場合は、ハローワークで失業給付の手続きを行いましょう。定年退職の場合、自己都合退職として扱われるのが一般的ですが、給付制限期間は1ヶ月となっています。
65歳以上で退職した場合は「高年齢求職者給付金」として一時金が支給されます。被保険者期間が1年以上なら基本手当日額の50日分、1年未満なら30日分が受け取れます。
確定申告の準備
年の途中で退職して年末調整を受けていない場合は、翌年に確定申告が必要です。退職金を受け取った場合も、「退職所得の受給に関する申告書」を提出していなければ確定申告で精算する必要があります。

再雇用・再就職する場合の追加手続き
定年後も同じ会社で再雇用される場合や、別の会社に再就職する場合は、追加で確認すべきことがあります。
同じ会社で再雇用される場合
再雇用の場合、労働条件(給与・勤務時間・雇用形態)が変わることが一般的です。新しい労働契約書の内容をしっかり確認し、不明点は署名前に質問しましょう。
健康保険と厚生年金は、一度資格喪失して再取得する手続きが行われます。これは会社側が行うため、自分で手続きする必要はありません。ただし、保険料が変わる場合があるので確認しておくとよいでしょう。
高年齢雇用継続給付金の確認
60歳以降に再雇用されて給与が60歳時点の75%未満に低下した場合、雇用保険から「高年齢雇用継続基本給付金」が支給される可能性があります。支給額は低下した割合によって異なり、最大で賃金の10%が支給されます(2025年4月以降に60歳に到達する方は15%から10%に縮小。将来的に廃止予定)。
この給付金はハローワークでの手続きが必要ですが、多くの場合は会社が代行して申請してくれます。念のため会社に確認しておきましょう。
在職老齢年金の仕組み
再雇用で厚生年金に加入しながら働く場合、給与と年金の合計額によっては年金が減額されることがあります。これを「在職老齢年金」といいます。
具体的には、給与(賞与含む)と年金月額の合計が65万円を超えると、超えた分の半額が年金から差し引かれます(2026年4月の制度改正で50万円から65万円に引き上げ)。事前にシミュレーションして、最適な働き方を検討するのがおすすめです。
定年退職の手続きチェックリスト【時系列まとめ】
ここまでの内容を時系列のチェックリストとしてまとめます。
| 時期 | やること | 備考 |
|---|---|---|
| 3ヶ月前 | 就業規則・退職金制度の確認 | 人事部に相談 |
| 3ヶ月前 | 健康保険の選択肢を比較 | 任意継続 vs 国保 vs 扶養 |
| 2ヶ月前 | 年金見込額の確認 | ねんきんネットで確認 |
| 2ヶ月前 | 財形貯蓄・持株会の手続き確認 | 解約・払出の条件確認 |
| 1ヶ月前 | 住民税の支払い方法を確認 | 経理に確認 |
| 1ヶ月前 | 引き継ぎ資料の作成 | 後任者へ |
| 退職日 | 返却物の提出・受取物の確認 | チェックリスト参照 |
| 退職後14日以内 | 健康保険の切り替え | 任意継続は20日以内 |
| 退職後14日以内 | 国民年金への切り替え | 市区町村窓口 |
| 退職後速やかに | ハローワークで失業給付手続き | 離職票が届いたら |
| 翌年2〜3月 | 確定申告 | 年末調整未済の場合 |
定年退職で損しないための3つのポイント
手続きだけでなく、知っておくと得する情報もまとめておきます。
退職金の税金を抑える方法
退職金は「退職所得」として分離課税の対象で、勤続年数に応じた退職所得控除が適用されます。勤続20年超の場合は「800万円+70万円×(勤続年数−20年)」が控除額です。
「退職所得の受給に関する申告書」を会社に提出していれば、適正な税額で源泉徴収されるため確定申告は不要です。提出しないと一律20.42%が源泉徴収され、確定申告で取り戻す必要が出てきます。
失業給付と年金の併給調整に注意
60歳〜65歳未満の方が失業給付を受けると、特別支給の老齢厚生年金が全額停止されます。どちらが金額的に有利かを比較してから手続きするのが賢明です。
生命保険や医療保険の見直し
会社の団体保険に加入していた場合、退職により保障がなくなります。必要に応じて個人の保険に切り替えるか、新たに加入する手続きを退職前に進めておきましょう。

よくある質問(Q&A)
Q. 定年退職の手続きはいつから始めればいいですか?
A. 退職の3ヶ月前から準備を始めるのが理想です。就業規則の確認、健康保険の比較、年金見込額の確認など、事前に済ませておくべきことが多いためです。余裕を持って計画的に進めましょう。
Q. 定年退職後にハローワークで手続きするメリットは?
A. 65歳未満で再就職の意思がある場合、失業給付(基本手当)を受け取れます。65歳以上の場合は高年齢求職者給付金として一時金が支給されます。いずれもハローワークでの手続きが必要です。
Q. 健康保険は任意継続と国保のどちらが得ですか?
A. ケースバイケースです。任意継続は退職時の標準報酬月額をもとに計算され、国保は前年の所得をもとに計算されます。一般的には退職直後は任意継続の方が安い傾向がありますが、必ず両方の保険料を試算してから選びましょう。
Q. 退職後も住民税を払い続けなければなりませんか?
A. はい。住民税は前年の所得に基づいて課税されるため、退職した年の翌年も住民税の納付が発生します。収入がない状態での支払いに備えて、事前に資金を確保しておくことが大切です。
Q. 再雇用される場合も失業給付はもらえますか?
A. 再雇用で継続して働く場合は失業給付の対象外です。ただし、再雇用を断って退職した場合は、ハローワークで失業給付の手続きが可能です。
Q. 定年退職の手続きを代行してもらうことはできますか?
A. 社会保険労務士や行政書士に各種届出の代行を依頼することは可能です。手続きに不安がある場合は、市区町村の無料相談窓口を利用するのもよい方法です。
まとめ:定年退職の手続きは事前準備がすべて
定年退職の手続きは種類が多いものの、時系列に沿ってひとつずつ進めていけば漏れなく対応できます。
特に重要なのは以下の3点です。
- 健康保険の切り替え:退職後14〜20日以内に手続きが必要
- 年金の請求:申請しないと受け取れないので忘れずに
- 退職金の税金:「退職所得の受給に関する申告書」の提出で節税
困ったときは、日本年金機構やハローワークの窓口に相談するのが確実です。また、野村アセットマネジメントの定年退職手続きガイドも参考になります。



