退職金の平均相場はどのくらい?
退職金の額は企業規模・業種・学歴・退職理由によって大きく異なる。ここではまず、全体的な退職金の平均相場を確認しておこう。
厚生労働省「就労条件総合調査(令和5年)」によると、退職給付制度がある企業の割合は全体の約74.9%だ。大学・大学院卒(管理・事務・技術職)で勤続20年以上かつ45歳以上の定年退職者の平均退職金は約1,896万円とされている(厚生労働省 就労条件総合調査)。

ただし、この数字は大企業を含む全体の平均であり、中小企業の場合はこれより少なくなる傾向がある。企業規模が大きいほど、また勤続年数が長いほど退職金の支給額は高くなるのが一般的だ。
勤続年数別の退職金相場
退職金は勤続年数が長いほど増えるのが基本だ。以下に勤続年数別のおおよその相場をまとめた。金額は企業規模や業種によって異なるため、あくまで目安として参考にしてほしい。
勤続5年の退職金相場
勤続5年の退職金は、大企業で約40万〜70万円、中小企業で約20万〜50万円程度が目安だ。ただし、多くの企業では「勤続3年以上」を支給条件としているため、勤続3年未満では退職金が出ないケースも多い。
勤続10年の退職金相場
勤続10年になると、大企業で約150万〜300万円、中小企業で約80万〜180万円程度が目安になる。このあたりから自己都合退職と会社都合退職で金額に差が出はじめる。
勤続15年の退職金相場
勤続15年では、大企業で約400万〜600万円、中小企業で約200万〜350万円程度が相場だ。
勤続20年の退職金相場
勤続20年になると、大企業で約700万〜1,000万円、中小企業で約350万〜600万円程度となる。退職所得控除の計算方式が切り替わる区切りでもあるため、退職時期の検討にも影響する。
退職所得控除や受け取るときの税金の仕組みをまとめて確認したいなら、退職金と税金を解説した本を1冊手元に置いておくのも1つの方法だ。
勤続25年〜30年の退職金相場
勤続25年で大企業は約1,000万〜1,500万円、勤続30年で約1,500万〜2,000万円が相場だ。中小企業では勤続25年で約500万〜900万円、勤続30年で約700万〜1,200万円程度となっている。
定年退職(勤続35年〜38年)の退職金相場
定年まで勤め上げた場合の退職金は、大企業で約1,800万〜2,500万円、中小企業で約800万〜1,200万円が目安だ。学歴による差も大きく、大卒と高卒では数百万円の差がつくケースもある。
退職金額を左右する主な要因
- 勤続年数(最も影響が大きい)
- 企業規模(大企業ほど高い傾向)
- 業種(金融・保険業が高い傾向)
- 学歴(大卒のほうが高い傾向)
- 退職理由(会社都合のほうが自己都合より高い)
- 退職金制度の種類(退職一時金・企業年金・確定拠出年金など)
自己都合退職と会社都合退職で退職金はどう変わる?
退職理由によって退職金の金額は大きく変わる。自己都合退職の場合は会社都合退職と比べて退職金が減額されるのが一般的だ。
減額の幅は企業によって異なるが、一般的には以下のような傾向がある。
- 勤続10年の場合:会社都合の約60〜80%程度
- 勤続20年の場合:会社都合の約70〜85%程度
- 勤続30年の場合:会社都合の約80〜90%程度
勤続年数が長くなるほど、自己都合と会社都合の差は縮まる傾向がある。ただし、懲戒解雇の場合は退職金が全額不支給になることもあるため、注意が必要だ。

業種別の退職金相場の違い
業種によっても退職金の水準はかなり異なる。金融・保険業が最も高い水準にあり、大学卒で約1,940万円、高校卒で約1,497万円程度が平均値とされている(厚生労働省 賃金事情等総合調査)。
一方、飲食業やサービス業は退職金の水準が低い傾向がある。また、建設業や製造業では、大卒よりも高卒のほうが退職金額が高いケースもある。これは職種や勤続年数の構成が影響している。
退職金が高い業種
- 金融・保険業
- 電気・ガス・熱供給・水道業
- 製造業(大手メーカー)
- 情報通信業(大手IT企業)
退職金が低めの業種
- 宿泊業・飲食サービス業
- 生活関連サービス業
- 小売業(中小規模)
退職金制度の種類と特徴
退職金にはいくつかの制度があり、会社がどの制度を採用しているかによって受け取り方が変わる。
退職一時金制度
退職時に一括で退職金を受け取る最も一般的な方式だ。計算方法は「基本給連動型」「ポイント制」「定額制」などがある。
確定給付企業年金(DB)
あらかじめ給付額が決まっている企業年金制度だ。退職時に一時金として受け取ることも、年金として分割で受け取ることもできる。
確定拠出年金(企業型DC)
会社が掛金を拠出し、従業員自身が運用する制度だ。運用成績によって受取額が変わるため、退職金の額が確定していないという特徴がある。
中小企業退職金共済(中退共)
国の制度で、中小企業の従業員を対象としている。会社が毎月の掛金を中退共に積み立て、退職時に従業員が直接受け取る仕組みだ。
中退共から直接受け取るため、会社の業績悪化や倒産の影響を受けにくいメリットがある。ただし、掛金の積立期間が1年未満の場合は退職金が支給されない点に注意しよう。
退職金の計算方法の種類
退職金の計算方法は企業によって異なる。代表的な方式を紹介する。
基本給連動型
退職時の基本給に勤続年数に応じた支給率をかけて計算する方式だ。「退職時基本給 × 支給率 × 退職理由別係数」という計算式が多い。基本給が高い人ほど退職金も高くなる。
ポイント制
勤続年数や職位、人事評価などに応じてポイントを付与し、累積ポイント × 単価で退職金を計算する方式だ。基本給に直接連動しないため、年功序列の要素を抑えた設計ができる。
定額制
勤続年数に応じて一定額を支給する方式だ。計算がシンプルで分かりやすいのが特徴だが、個人の貢献度が反映されにくいデメリットがある。
自社の計算方式がわかったら、基本給や勤続年数を当てはめて電卓でざっと計算してみると、自分の見込み額をつかみやすい。

退職金が少ないと感じたときにやるべきこと
退職金の相場を知った結果、「自分の退職金は少ないかもしれない」と感じた場合にやるべきことを整理する。
退職金規程を改めて確認する
まずは自社の退職金規程を確認しよう。計算方法を理解すれば、退職時期をずらすことで退職金が増えるケースもある。たとえば勤続年数が切り上げ計算の場合、あと数ヶ月勤務するだけで1年分多くカウントされることがある。
退職金の上乗せ交渉を検討する
早期退職制度や希望退職に応じる場合は、退職金の上乗せ(割増退職金)が提示されることがある。通常の退職金に加えて基本給の数ヶ月分〜1年分が上乗せされるケースもあるため、提示された条件をしっかり確認しよう。
不足分を自分で補う資産形成を始める
退職金だけでは老後の資金として不十分な場合は、iDeCoやNISAを活用して自分で資産形成を行うことが大切だ。早く始めるほど複利効果が大きくなるため、退職金の相場を知ったこのタイミングで行動を起こすのがよい。
iDeCoやNISAの仕組みを基礎から確認したい人は、入門書を1冊読んでから始めると、自分に合った使い方を考えやすい。

退職金の相場に関するよくある質問Q&A
Q. 退職金がない会社は多い?
退職給付制度がある企業は全体の約74.9%(厚生労働省 就労条件総合調査 令和5年)。つまり約4社に1社は退職金制度がない。特に従業員30人未満の企業では退職金制度がない割合が高くなる。
Q. 退職金の支給日はいつ?
退職金の支給日は各企業の退職金規程に定められている。「退職日から○ヶ月以内」とされているケースが多く、一般的には退職後1〜2ヶ月程度で振り込まれる。
Q. パート・アルバイトでも退職金はもらえる?
退職金制度がパート・アルバイトにも適用される場合はもらえる。ただし、正社員のみを対象とする企業が多いのが実情だ。中退共は雇用形態に関係なく加入できるため、パート・アルバイトでも対象になっている場合がある。
Q. 退職金の相場を調べるにはどこを見ればいい?
自分の会社の退職金規程が最も正確だ。業界全体の相場を知りたい場合は、厚生労働省の「就労条件総合調査」や東京都産業労働局の「中小企業の賃金・退職金事情」が参考になる。
Q. 転職を繰り返すと退職金は少なくなる?
一般的にはそうなる。退職金は勤続年数が長いほど支給率が高くなる設計が多いため、短い勤続年数で転職を繰り返すと、1回あたりの退職金は少額になりやすい。ただし、中退共に加入している企業間の転職であれば通算制度を利用できるため、退職金の不利が軽減される場合がある。
Q. 退職金がない場合、老後資金はどのくらい必要?
退職金がない場合は、その分を自分で準備する必要がある。一般的に老後に必要な生活費は、夫婦で月額約27万円、単身で月額約15万円とされている。年金だけではまかなえない部分を貯蓄や投資で補うことが大切だ。
まとめ|退職金の相場を知って将来設計に活かそう
退職金の平均相場と勤続年数別の目安をまとめると、以下のとおりだ。
- 定年退職時の平均退職金は大卒で約1,896万円(大企業含む全体平均)
- 勤続年数が長いほど退職金は増加し、企業規模が大きいほど高い傾向
- 自己都合退職は会社都合より減額されるのが一般的
- 中小企業の定年退職金は約800万〜1,200万円が目安
- 退職金制度の種類(一時金・DB・DC・中退共)によって受取方法が異なる
退職金は老後の生活設計に大きく影響する。自分の勤務先の退職金制度と支給見込み額を把握し、足りない部分はiDeCoやNISAなどで補完していくことが大切だ。
退職金の最新データは東京都産業労働局の「中小企業の賃金・退職金事情(令和6年版)」でも詳しく公開されている。また、退職金の計算シミュレーションは中退共の公式サイトでも利用できる。


