セクハラを受けていて退職を考えている方にとって、「どこに相談すればいいのか」「泣き寝入りするしかないのか」という不安は相当なものだと思います。
結論から言うと、セクハラで退職する場合、適切な証拠と相談先を押さえておけば、会社都合退職にでき、慰謝料を請求できる可能性もあります。泣き寝入りする必要はまったくありません。
この記事では、セクハラで退職する際の正しい方法を、証拠の残し方から相談先、退職後の手続きまで丁寧に解説します。

セクハラの定義と種類
セクハラ(セクシュアルハラスメント)は、男女雇用機会均等法第11条で禁止されている行為です。職場におけるセクハラは大きく2つの類型に分けられます。
対価型セクハラ
性的な言動への対応によって、解雇・降格・減給などの不利益を受けるケースです。たとえば「食事の誘いを断ったら評価を下げられた」「性的な要求を拒否したら異動させられた」といった場合がこれに該当します。
環境型セクハラ
性的な言動により就業環境が不快になるケースです。卑猥な冗談を繰り返す、体に触れてくる、性的なポスターを掲示するなどが該当します。
セクハラは被害者の性別を問いません。男性が被害者になるケースもありますし、同性間のセクハラも存在します。
セクハラの証拠の残し方
セクハラで退職する際も、パワハラと同様に証拠が重要です。証拠があることで、会社都合退職の主張や慰謝料請求がスムーズに進みます。
有効な証拠の種類
| 証拠の種類 | 具体的な内容 | 証拠としての強さ |
|---|---|---|
| 録音・録画 | セクハラ発言の録音、行為の録画 | 非常に強い |
| メール・LINE・チャット | 性的なメッセージのスクリーンショット | 強い |
| 日記・メモ | 日時・場所・内容・目撃者を記録 | 中程度 |
| 診断書 | セクハラが原因の心身不調の証明 | 強い |
| 目撃者の証言 | 第三者からの証言 | 中程度〜強い |
証拠を残すときの注意点
セクハラの証拠は、被害を受けたらすぐに記録する習慣をつけましょう。時間が経つと記憶が曖昧になり、証拠としての説得力が弱くなります。
〇月〇日(曜日)14:00頃、オフィスの給湯室にて、△△課長に肩を触られながら「今夜空いてない?」と言われた。その場には□□さんもいた。強い不快感と恐怖を感じた。
LINEやメールで性的なメッセージが送られてきた場合は、削除せずにスクリーンショットを保存することが重要です。送信者名と日時が表示される状態で保存しましょう。

セクハラの相談先一覧
セクハラの相談先は複数あります。状況に応じて使い分けましょう。
社内の相談窓口
男女雇用機会均等法により、すべての企業にセクハラ相談窓口の設置が義務付けられています。会社には相談者のプライバシーを守る義務があり、相談したことを理由に不利益な取り扱いをすることも禁止されています。
ただし現実には、相談が適切に処理されないケースもあります。対応に不安がある場合は、外部の窓口も併用しましょう。
都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)
セクハラの相談で最も効果的な外部窓口は、各都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)です。男女雇用機会均等法に基づく相談を受け付けており、会社に対して助言・指導・勧告を行う権限を持っています。相談は無料です。
総合労働相談コーナー
各労働局や労働基準監督署に設置されている総合労働相談コーナーでも、セクハラに関する相談ができます。面談のほか電話での相談も可能です。
弁護士・法テラス
慰謝料請求や損害賠償を検討している場合は、弁護士への相談が有効です。法テラス(日本司法支援センター)では、経済的に余裕がない方向けに無料法律相談を実施しています。
警察
セクハラの内容が強制わいせつや強制性交等に該当する場合は、刑事事件として警察への相談・被害届の提出も検討してください。
セクハラで退職する際の手順
セクハラが原因で退職を決意した場合の具体的な手順を説明します。
ステップ1:証拠を確保する
退職の意思を伝える前に、証拠をできるだけ多く集めておきましょう。退職後は社内の情報にアクセスできなくなるため、在職中の証拠確保が極めて重要です。
ステップ2:外部機関に相談する
労働局の雇用環境・均等部(室)や弁護士に相談し、今後の方針を決めます。「相談した」という記録は、後の手続きで有利に働きます。
ステップ3:退職の意思を伝える
加害者以外の上司または人事部に退職の意思を伝えます。直接伝えるのが精神的に難しい場合は、書面(内容証明郵便)で退職届を送付するか、弁護士が運営する退職代行を利用しましょう。
ステップ4:退職理由を確認する
離職票の退職理由が「会社都合」になっているか確認してください。セクハラが原因の退職は「特定受給資格者」に該当する可能性があり、失業保険の給付制限なしで受給できます。
ステップ5:慰謝料請求を検討する
退職後でもセクハラに対する慰謝料を請求することは可能です。不法行為の時効は3年なので、退職後に落ち着いてから弁護士に相談するのもひとつの方法です。
退職届の退職理由欄に「セクハラ」と書く必要はありません。「一身上の都合」で問題ありません。ただし、ハローワークでの手続きの際にはセクハラの事実を証拠とともに説明しましょう。
会社都合退職にする方法
セクハラが原因で退職した場合、以下の条件を満たせばハローワークで「特定受給資格者」に認定される可能性があります。
- 職場でのセクハラにより就業環境が著しく害された
- 会社に相談したが適切な対応がなされなかった
- やむを得ず離職した
特定受給資格者に認定されると、以下の優遇を受けられます。
- 7日間の待期期間のみで失業保険の受給を開始できる
- 給付日数が自己都合退職より大幅に増える
- 国民健康保険料の軽減措置を受けられる

セクハラの慰謝料相場と請求方法
セクハラによる精神的苦痛に対して、加害者や会社に慰謝料を請求できる場合があります。
慰謝料の相場
セクハラの慰謝料は、行為の悪質性や被害の程度によって異なりますが、一般的な相場は以下の通りです。
| セクハラの程度 | 慰謝料の相場 |
|---|---|
| 言葉によるセクハラ | 数万円〜50万円程度 |
| 身体的接触を伴うセクハラ | 50万円〜200万円程度 |
| 退職に追い込まれた場合 | 100万円〜300万円程度 |
| 強制わいせつなど悪質な場合 | 200万円以上 |
請求先は加害者と会社の両方
慰謝料は加害者個人だけでなく、会社に対しても請求できます。会社には「使用者責任」(民法715条)や「職場環境配慮義務」があるためです。会社がセクハラを知りながら適切な対応をしなかった場合、賠償責任が認められやすくなります。
退職前に確認しておくべきこと
退職を決意する前に、以下の点を確認しておきましょう。
会社の対応を記録しておく
社内の相談窓口にいつ相談したか、どのような対応がなされたか(あるいはなされなかったか)を記録しておきましょう。会社が適切に対応しなかった事実は、慰謝料請求や会社都合退職の根拠になります。
経済面の準備
退職後の生活費を確保しておくことも重要です。失業保険の受給までのつなぎ資金として、最低でも1〜2ヶ月分の生活費を準備しておきましょう。
転職活動の準備
精神的に余裕があれば、在職中から転職活動を始めておくと安心です。転職エージェントに登録して求人を確認するだけでも、「退職しても次がある」という安心感につながります。
よくある質問(Q&A)
Q. セクハラを受けていますが、証拠がありません。退職できますか?
A. 証拠がなくても退職自体は可能です。ただし、会社都合退職の認定や慰謝料請求が難しくなります。今からでもメモを書き始める、録音を始めるなど、できる範囲で証拠を集めましょう。
Q. セクハラで退職した場合、転職先にバレますか?
A. 転職先にセクハラの事実が伝わることは基本的にありません。離職票は本人とハローワークのやり取りで使うものであり、転職先に提出するものではありません。退職理由は前向きな表現で伝えましょう。
Q. 男性でもセクハラで退職できますか?
A. もちろん可能です。セクハラは性別に関係なく成立します。男性が被害者の場合も、女性の場合と同じ手順で対応できます。相談することを躊躇しないでください。
Q. 退職後にセクハラの慰謝料を請求できますか?
A. はい、退職後でも慰謝料請求は可能です。不法行為に基づく損害賠償請求権の時効は3年ですので、その期間内であれば請求できます。
Q. セクハラの加害者が社長の場合はどうすればいいですか?
A. 社内での解決が困難な場合は、直接外部に相談しましょう。労働局の雇用環境・均等部(室)、弁護士、法テラスが有効な相談先です。
まとめ:セクハラで泣き寝入りする必要はない
セクハラによる退職は、正しい手順を踏めば自分を守りながら次に進むことができます。
重要なポイントは以下の3つです。
- 証拠を残す:録音、スクリーンショット、メモ、診断書
- 適切な相談先に相談する:労働局、弁護士、法テラス
- 会社都合退職を勝ち取る:ハローワークで特定受給資格者の認定を受ける
一人で悩まず、厚生労働省のハラスメント相談窓口に連絡してみてください。法テラスでは無料で弁護士に相談できます。労働問題弁護士ガイドのセクハラ相談先解説も参考にしてください。



