病気やケガで仕事を休んでいるとき、「傷病手当金はいつまでもらえるの?」という疑問は誰もが持つもの。
傷病手当金の支給期間には上限があり、以前は暦日で計算されていたが、法改正によって「通算」方式に変更されている。この改正を正しく理解しておかないと、本来受け取れるはずの給付を逃してしまうこともある。
この記事では、傷病手当金の支給期間の仕組み、通算化のルール、そして退職後の継続受給について詳しく解説していく。

傷病手当金の支給期間は通算1年6ヶ月
傷病手当金の支給期間は、支給開始日から通算して1年6ヶ月が上限。これは健康保険法に基づくルールで、同じ病気やケガに対して支給される期間の合計が1年6ヶ月に達するまで受給できる。
ここでいう「通算」とは、実際に傷病手当金が支給された日数を合計するということ。途中で仕事に復帰した期間はカウントされないため、復帰と休職を繰り返しても、支給日数が1年6ヶ月に達するまでは受給できる仕組みになっている。
通算化はいつから?改正の背景と内容
傷病手当金の支給期間が通算方式に変更されたのは、令和4年(2022年)1月1日のこと。それ以前は、支給開始日から暦日で1年6ヶ月を経過した時点で支給が終了していた。
改正前と改正後の違い
| 項目 | 改正前 | 改正後(現行) |
|---|---|---|
| 期間の数え方 | 暦日で1年6ヶ月 | 支給日を通算して1年6ヶ月 |
| 復帰期間の扱い | カウントに含む | カウントに含まない |
| 途中復帰後の再休職 | 残りの暦日分のみ | 通算して1年6ヶ月分まで |
改正の影響を具体例で確認
【例】6ヶ月休職→3ヶ月復帰→再び休職した場合
- 改正前:支給開始日から暦日で1年6ヶ月を計算するため、3ヶ月の復帰期間も含まれ、残りの支給可能期間は9ヶ月(1年6ヶ月 − 6ヶ月 − 3ヶ月 = 9ヶ月)
- 改正後:復帰期間の3ヶ月はカウントされないため、残りの支給可能期間は1年(1年6ヶ月 − 6ヶ月 = 12ヶ月)
このように、改正後は復帰した期間を除外してカウントするため、実質的に受給できる期間が長くなったケースが多い。

待期期間の3日間はどうカウントする?
傷病手当金を受給するには、連続して3日間の待期期間を完成させる必要がある。この3日間には、以下の日も含めてカウントできる。
- 有給休暇を取得した日
- 土曜日・日曜日・祝日
- 会社の公休日
たとえば、金曜日に体調を崩して欠勤し、土日を挟めば、3日間の待期期間が完成する。翌月曜日から傷病手当金の支給対象になるわけだ。
ただし、待期期間の3日間は連続していることが条件。「月曜欠勤→火曜出勤→水曜欠勤→木曜欠勤」のように間に出勤日が入ると、待期期間がリセットされてしまうので注意が必要。
支給期間が終了した後はどうなる?
通算1年6ヶ月の支給期間が終了すると、同じ病気やケガに対する傷病手当金は受給できなくなる。ただし、その後の選択肢がないわけではない。
障害年金への切り替え
傷病手当金の支給終了後も療養が必要な場合は、障害年金の申請を検討しよう。障害年金は、初診日から1年6ヶ月を経過した日(障害認定日)に一定の障害状態にあれば請求できる制度。
傷病手当金と障害年金は併給調整があるため、障害年金の方が日額が高い場合は傷病手当金は支給されないが、逆に傷病手当金の方が高ければ差額が支給される。
生活保護などの公的支援
傷病手当金の支給が終了し、他に収入がない場合は、生活保護や各種社会福祉制度の利用も選択肢に入る。お住まいの市区町村の福祉課に相談してみよう。
別の傷病による新たな申請
同じ病気で1年6ヶ月受給した後でも、まったく別の病気やケガが原因で労務不能になった場合は、新たに傷病手当金を申請できる。ただし、前の傷病の再発と判断された場合は通算されるため、医師の診断が重要になる。
退職後も傷病手当金は受給できる?
退職後も引き続き傷病手当金を受給するためには、以下の条件をすべて満たす必要がある。
- 退職日までに健康保険の被保険者期間が継続して1年以上あること
- 退職時に傷病手当金を受給しているか、受給条件を満たしていること
- 退職日に出勤していないこと
特に注意したいのが3つ目の条件。退職日に出勤してしまうと、「労務不能ではなかった」と判断されて退職後の継続受給ができなくなる。退職日は欠勤扱いにしておくことが大切。
退職後の傷病手当金の受給中に仕事ができる状態になった場合(労務不能でなくなった場合)は、その時点で支給が打ち切られる。一度打ち切られると、再び同じ傷病で労務不能になっても支給は再開されない点に注意。
傷病手当金と失業保険(雇用保険)は同時にもらえる?
結論から言うと、傷病手当金と失業保険(基本手当)を同時に受給することはできない。
失業保険は「働ける状態にあるが仕事が見つからない人」に支給されるもの。一方、傷病手当金は「労務不能の状態」に支給されるもの。この2つは条件が相反するため、同時受給はできない仕組みになっている。
ただし、傷病手当金の受給が終了して働ける状態になった後に、失業保険を申請することは可能。療養中は失業保険の受給期間を延長しておくことで、回復後に失業保険を受け取れるようになる。
受給期間の延長手続きは、退職翌日から30日経過した後の1ヶ月以内にハローワークに申請する。延長できる期間は最大で3年間となっている。

傷病手当金の支給期間に関するよくある質問
Q. 1年6ヶ月の通算期間はどうやって確認できる?
加入している健康保険組合に問い合わせれば、現在までの支給日数と残りの日数を確認できる。協会けんぽの場合は、支給決定通知書に支給期間が記載されているので確認してみよう。
Q. 別の病気になったら期間はリセットされる?
まったく別の病気やケガであれば、新たに支給開始日が設定され、そこから通算1年6ヶ月受給できる。ただし、関連する傷病(たとえばうつ病と適応障害など)の場合は同一傷病と判断されることもあるため、医師に確認しておくのがおすすめ。
Q. 支給期間中に転職したらどうなる?
傷病手当金を受給中に転職先が決まって働き始めた場合は、労務不能の状態でなくなるため支給は停止される。転職先で新たに同じ傷病で休職することになった場合は、新しい健康保険から申請することになるが、支給日数は通算される可能性がある。
Q. 傷病手当金をもらいながら退職代行を使える?
傷病手当金を受給中に退職代行を利用して退職することは可能。退職代行を使っても傷病手当金の受給に影響はない。ただし、退職日に出勤扱いにならないよう、退職代行業者にその旨をしっかり伝えておくことが重要になる。
Q. 休職と退職、どちらのタイミングで申請すべき?
傷病手当金は在職中に申請を開始するのがスムーズ。在職中であれば会社を通じて申請でき、退職後の継続受給の条件も満たしやすくなる。退職を検討している場合でも、まずは休職して傷病手当金の申請を始めてから退職するのがおすすめ。
Q. 健康保険の任意継続をすると傷病手当金はもらえる?
退職後に健康保険の任意継続を選択しても、任意継続の被保険者には傷病手当金は支給されない。退職前に受給を開始していれば「資格喪失後の継続給付」として受給できるが、任意継続加入後に新たに傷病手当金を申請することはできないため注意しよう。退職前にしっかりと申請の準備を進めておくことが大切になる。
Q. 傷病手当金の申請が遅れた場合はどうなる?
傷病手当金の申請には時効があり、労務不能であった日の翌日から起算して2年間が申請期限となる。つまり、過去にさかのぼって申請することも可能だが、2年を超えた分は請求できなくなるため、できるだけ早く申請手続きを始めるのがおすすめ。退職前に申請が間に合わなかった場合でも、退職後に自分で健康保険組合に直接提出すれば受け付けてもらえる。
傷病手当金の支給開始日を確認する方法
自分の傷病手当金の支給開始日や、現在の支給状況を正確に把握しておくことは非常に重要。確認方法は加入している健康保険の種類によって異なる。
協会けんぽ(全国健康保険協会)に加入している場合は、支給決定通知書に支給開始日や支給日数が記載されている。この通知書は申請のたびに届くので、保管しておこう。
健康保険組合(大企業に多い)に加入している場合は、組合の窓口やWebサイトで確認できることが多い。電話やメールでの問い合わせにも対応しているケースがほとんどなので、不明点があれば遠慮なく確認してみよう。

まとめ
傷病手当金の支給期間は、支給開始日から通算して1年6ヶ月。令和4年の法改正により、途中で復帰した期間はカウントされなくなったため、以前よりも長く受給できるようになった。
退職後も条件を満たせば継続して受給できるが、退職日に出勤しないことや、被保険者期間が1年以上あることなど、細かい条件に気をつける必要がある。
支給期間が終了した後は障害年金への切り替えや失業保険の受給期間延長など、次のステップを計画的に準備しておくことで、安心して療養に専念できる環境を整えよう。

