「傷病手当金をもらっているけど、退職したら打ち切りになるの?」と不安に感じている方は多いです。
結論からお伝えすると、一定の条件を満たせば退職後も傷病手当金を受け取り続けることが可能です。ただし、条件を知らないまま退職すると受給資格を失ってしまうこともあります。
この記事では、傷病手当金を退職後も継続して受給するための条件、申請方法、やってしまいがちな失敗例まで詳しく解説します。

傷病手当金とは?基本をおさらい
傷病手当金は、健康保険に加入している会社員が病気やケガで働けなくなったときに、生活を保障するために支給される手当です。
支給される条件
- 業務外の病気やケガで働けない状態であること
- 連続する3日間の待期期間を経て、4日目以降も仕事を休んでいること
- 休んでいる期間に給与の支払いがないこと(給与が傷病手当金の額より少ない場合は差額が支給される)
支給額の計算方法
支給日額は「標準報酬月額 ÷ 30日 × 2/3」で計算されます。大まかに言うと、月収の約3分の2が支給されるイメージです。
例えば標準報酬月額が30万円の場合、1日あたり約6,667円、1ヶ月で約20万円が支給されます。傷病手当金は非課税のため、所得税や住民税がかかりません。
給与明細の金額をもとに自分の支給額をざっくり試算しておくと、退職後の生活費の見通しが立てやすくなります。計算には手元に電卓があると便利です。
支給期間
支給開始日から通算して最長1年6ヶ月です。途中で復職した期間は日数にカウントされないため、復職と休職を繰り返す場合でも合計1年6ヶ月分は受給できます。
傷病手当金は会社員(健康保険の被保険者)が対象の制度です。国民健康保険には傷病手当金の制度がないため、退職後の継続受給のルールを知っておくことが重要です。
退職後も傷病手当金を継続するための4つの条件
退職後も傷病手当金(継続給付)を受け取るためには、以下の4つの条件をすべて満たす必要があります。
条件1:健康保険の被保険者期間が継続して1年以上あること
退職日までに健康保険の被保険者期間が継続して1年以上あることが必要です。ここでのポイントは「継続して」という部分で、転職で保険が途切れた場合は通算されません。ただし、転職先でも間を空けずに健康保険に加入していれば、通算1年以上としてカウントされます。
条件2:退職日に傷病手当金を受給中、または受給できる状態であること
退職日の時点で傷病手当金を受給しているか、受給の条件を満たしている(連続3日間の待期期間が完成している)必要があります。
条件3:退職日に出勤していないこと
これが見落としやすい条件です。退職日当日に出勤してしまうと、継続給付の資格を失います。退職日には欠勤の状態である必要があります。「最終日だから挨拶に行こう」と出勤するのはNGです。
条件4:退職後も引き続き働けない状態であること
退職後も病気やケガのために労務不能であることが必要です。退職後に別の仕事をしたり、働ける状態になった場合は支給が終了します。詳細な条件は全国健康保険協会(協会けんぽ)の傷病手当金ページでも確認できます。
退職日当日に出勤してしまうと継続給付が受けられなくなります。退職代行を使う場合でも、退職日に「有給」や「欠勤」の扱いになっているか確認してください。
退職後の傷病手当金の申請方法
退職後に傷病手当金の継続給付を受ける場合の申請手順を解説します。
申請の流れ
- 医師の証明を取得する:申請書の「療養担当者記入用」欄に、主治医から「労務不能」の証明をもらいます
- 申請書を記入する:「傷病手当金支給申請書」の被保険者記入用の欄に必要事項を記入します
- 健康保険組合(または協会けんぽ)に提出する:退職後の継続給付の場合は、会社を通さずに自分で直接健康保険組合に申請書を提出します
- 審査・支給:審査後、指定した銀行口座に振り込まれます。審査期間は通常2週間〜1ヶ月程度です
退職後の申請で注意すべきポイント
- 退職前に使っていた健康保険証の記号・番号を控えておく(退職後は保険証を返却するため)
- 事業主の証明欄は、退職後の期間については記入不要
- 申請は1ヶ月ごとに行うのが一般的
- 申請書は各健康保険組合のWebサイトからダウンロードできる
申請は毎月のように続くので、申請書の控えや保険証の記号・番号のメモを1冊のファイルにまとめておくと、次の申請のときに迷わずに済みます。

傷病手当金と失業保険は同時にもらえる?
傷病手当金と失業保険(雇用保険の基本手当)は、同時に受給することはできません。理由は、傷病手当金は「働けない状態」の人に支給されるもので、失業保険は「働ける状態なのに仕事が見つからない人」に支給されるものだからです。
傷病手当金が終わってから失業保険をもらうには
傷病手当金の受給期間が終わった後に失業保険を受給する場合は、失業保険の受給期間を延長する手続きが必要です。通常、失業保険の受給期間は退職後1年間ですが、病気やケガで30日以上働けない状態が続いた場合は、最大4年間まで延長できます。
退職後すぐにハローワークで「受給期間の延長申請」を行っておきましょう。申請期限は、働けなくなった日の翌日から30日経過後の1ヶ月以内です。
よくある失敗パターンと対策
失敗1:退職日に出勤してしまった
退職日に挨拶回りや荷物の引き取りのために出勤すると、「退職日に労務に服した」と見なされ、継続給付の資格を失うことがあります。退職日は欠勤扱いにしてもらいましょう。
失敗2:被保険者期間が1年に足りなかった
転職直後に病気になった場合など、被保険者期間が1年未満だと継続給付は受けられません。退職前に自分の加入期間を確認しておきましょう。
失敗3:申請を忘れていた
傷病手当金の時効は2年間です。申請を忘れていても、2年以内であれば遡って申請できます。ただし、早めに申請するに越したことはありません。
失敗4:任意継続しないともらえないと思い込んでいた
退職後の継続給付は、任意継続保険とは別の制度です。任意継続をしなくても、条件を満たしていれば継続給付は受けられます。国民健康保険に切り替えた場合でも、退職前の健康保険組合から傷病手当金を受け取ることが可能です。

Q&A|傷病手当金の退職後の継続給付に関するよくある質問
Q. 退職後の傷病手当金はいくらもらえる?
在職中と同じ計算方法で、標準報酬月額の3分の2相当額です。退職したからといって金額が減ることはありません。
Q. 退職後に傷病手当金をもらいながらアルバイトはできる?
原則としてできません。傷病手当金は「労務不能」の状態に対して支給されるため、アルバイトをすると「働ける状態」と判断され、支給が停止される可能性が高いです。
Q. うつ病で退職した場合も継続給付の対象になる?
うつ病は傷病手当金の対象となる疾病です。主治医が「労務不能」と証明してくれれば、退職後も継続して受給できます。
Q. 傷病手当金の申請に会社の協力は必要?
退職後の継続給付の申請については、会社の事業主欄の記入は不要です。自分で申請書を記入し、医師の証明を添えて健康保険組合に直接提出します。
Q. 傷病手当金を受給中に障害年金を申請できる?
申請自体は可能です。ただし、障害厚生年金を受給する場合は傷病手当金との調整が行われ、障害厚生年金の日額が傷病手当金の日額を上回る場合は傷病手当金が支給されなくなります。逆に傷病手当金のほうが多い場合は差額が支給されます。
Q. 退職後に国民健康保険に切り替えても傷病手当金はもらえる?
もらえます。退職後の継続給付は退職前に加入していた健康保険組合から支給されるため、退職後にどの保険に加入しても影響しません。国民健康保険に切り替えた場合でも、申請先は退職前の健康保険組合のままです。
Q. 傷病手当金の申請書はどこでもらえる?
加入していた健康保険組合のWebサイトからダウンロードできます。協会けんぽの場合は全国健康保険協会のホームページから申請書をダウンロードして、医師の証明を記入してもらったうえで郵送で提出します。
まとめ
傷病手当金は、条件を満たせば退職後も最長1年6ヶ月(通算)にわたって受給を続けることができます。継続給付の条件は「被保険者期間1年以上」「退職日に受給中であること」「退職日に出勤していないこと」「退職後も労務不能であること」の4つです。
特に「退職日に出勤しない」という点は見落としやすいので、しっかり注意しておきましょう。退職前に一度でも傷病手当金を申請しておくと、継続給付の手続きがスムーズに進みます。
分からないことがあれば、加入している健康保険組合や全国健康保険協会(協会けんぽ)に問い合わせてみてください。


