うつ病を抱えながら退職を考えている方、毎日つらい思いをしながら出社するのは本当に大変なことです。「このまま働き続けたら壊れてしまう」と感じているなら、退職は自分を守るための大切な選択です。
うつ病での退職は、傷病手当金や失業保険の特例措置など、経済面をサポートする制度が充実しています。正しい手順を踏めば、退職後も安心して療養に専念できます。
この記事では、うつ病で退職する際の具体的な手続きと、利用できる制度をすべて解説します。

うつ病で退職する前に確認すべきこと
退職を急ぐ前に、いくつか確認しておきたいポイントがあります。
休職という選択肢も検討する
会社に休職制度がある場合、まず休職して療養に専念する方法もあります。休職中は傷病手当金を受給でき、社会保険にも加入し続けられるため、経済面での安定が保たれます。
休職期間中に回復して復職できれば、退職によるリスクを回避できます。ただし、職場環境がうつ病の原因である場合は、復職しても再発するリスクがあるため、主治医と相談して判断しましょう。
主治医に相談する
退職の判断は、主治医の意見を聞いてからにしましょう。うつ病の症状が重いときは、大きな決断を避けた方がよいとされています。主治医から「就業困難」の診断が出ている場合は、退職を前向きに検討してよいタイミングです。
経済面の確認
退職後の生活費をどう確保するか、事前に計算しておきましょう。傷病手当金、失業保険、貯蓄など、利用できる資金源を整理しておくと安心です。
うつ病で退職する際の手順
ここからは具体的な退職の手順を解説します。
ステップ1:診断書を取得する
心療内科や精神科の主治医に診断書を書いてもらいます。「うつ病により就業困難」「〇ヶ月の療養が必要」といった内容が記載されたものを用意しましょう。
ステップ2:退職の意思を伝える
直属の上司に退職の意思を伝えます。対面での伝達が難しい場合は、電話やメールでも構いません。退職理由は「体調不良のため」で十分であり、「うつ病」と具体的に伝える義務はありません。
精神的に上司と話すのが困難な場合は、弁護士が運営する退職代行サービスを利用するのもひとつの方法です。
ステップ3:退職届を提出する
退職届の退職理由は「一身上の都合」で問題ありません。退職日は上司と相談して決めますが、体調が悪い場合は無理に出勤する必要はありません。
ステップ4:傷病手当金の手続き
退職前に傷病手当金の受給を開始しておくことが重要です(詳細は後述)。退職日に出勤しないことも忘れずに。
ステップ5:退職後の手続き
退職後は健康保険と年金の切り替え、ハローワークでの失業保険の受給期間延長手続きなどを行います。
うつ病の症状が重いときに退職の手続きをすべて一人でこなすのは大変です。家族や信頼できる人に協力を求めましょう。手続きの代行を依頼できるサービスもあります。
傷病手当金を最大限活用する方法
うつ病で退職する際に最も重要な制度が傷病手当金です。正しく手続きすれば、退職後も最長1年6ヶ月間受給できます。
傷病手当金の受給条件
- 業務外の病気やケガで仕事を休んでいること
- 連続3日間の待期期間を完成していること
- 4日目以降に給与が支払われていないこと
退職後の継続受給の条件
退職後も傷病手当金を受け続けるためには、以下の条件をすべて満たす必要があります。
- 退職日までに継続して1年以上の被保険者期間があること
- 退職日に傷病手当金を受けているか、受ける条件を満たしていること
- 退職日に出勤していないこと
- 退職前に3日連続で休む(待期期間の完成)
- 4日目以降も休み、傷病手当金の受給条件を満たす
- 退職日は絶対に出勤しない(挨拶のための出社もNG)
支給額の目安
傷病手当金の支給額は、標準報酬月額の3分の2(約67%)です。たとえば月給30万円の場合は月額約20万円、月給40万円の場合は月額約27万円が目安になります。

失業保険の特例措置
うつ病で退職した場合、失業保険に関して以下の特例措置が利用できる可能性があります。
受給期間の延長
通常、失業保険の受給期間は退職日の翌日から1年間ですが、病気で働けない場合は最大3年間延長できます。傷病手当金を受給している間は、ハローワークで受給期間延長の手続きをしておきましょう。
特定理由離職者の認定
うつ病が原因で退職した場合、「特定理由離職者」に認定される可能性があります。認定されれば給付制限なしで失業保険を受給開始でき、給付日数も優遇されます。
傷病手当金から失業保険への切り替え
傷病手当金の受給が終了し、働ける状態に回復してからハローワークで求職の申し込みを行い、失業保険の受給を開始します。この順番を守ることで、傷病手当金と失業保険を連続して受給できます。
うつ病が業務上の原因なら労災も検討
うつ病の原因が長時間労働やパワハラなど業務上のものである場合は、労災保険の申請も検討しましょう。
労災認定の基準
精神障害の労災認定には、以下の3つの条件を満たす必要があります。
- 対象疾病を発病していること
- 発病前おおむね6ヶ月間に業務による強い心理的負荷があったこと
- 業務以外の心理的負荷や個体側の要因で発病したとは認められないこと
労災が認定されれば、治療費の全額補償、休業補償(給与の約80%)、障害が残った場合の障害補償年金などが受けられます。
退職後のメンタルケア
退職後は療養に専念することが最優先です。焦って転職活動を始める必要はありません。
治療の継続
退職しても通院と服薬は継続しましょう。自己判断で薬を中断するのは非常に危険です。健康保険の切り替え手続きを忘れず行い、医療費の負担が途切れないようにしてください。
自立支援医療制度の活用
自立支援医療制度を利用すると、精神科の通院費の自己負担が1割に軽減されます。申請は市区町村の窓口で行います。うつ病の治療が長期にわたる場合、大きな負担軽減になります。
生活リズムの維持
退職後は生活リズムが乱れやすくなります。起床時間だけでも一定に保つこと、散歩などの軽い運動を取り入れることが回復を助けます。
よくある質問(Q&A)
Q. うつ病で退職すると転職に不利になりますか?
A. うつ病での退職歴を転職先に伝える義務はありません。面接では「体調を崩し療養していたが、現在は回復し働く準備ができている」と伝えれば問題ありません。ブランクが長い場合は、療養中に取り組んでいたこと(資格取得など)を伝えるとよいでしょう。
Q. 退職届に「うつ病」と書く必要がありますか?
A. 書く必要はありません。「一身上の都合」で問題ありません。詳しい理由を聞かれた場合も「体調不良のため」程度の説明で十分です。
Q. 傷病手当金と失業保険は同時にもらえますか?
A. 同時受給はできません。傷病手当金を先に受給し、回復後に失業保険に切り替える流れが一般的です。失業保険の受給期間延長手続きを忘れずに行いましょう。
Q. うつ病で退職した場合、国民健康保険料は軽減されますか?
A. 特定理由離職者に認定された場合は、国民健康保険料の軽減措置を受けられます。前年の給与所得を30/100として計算されるため、大幅に保険料が下がります。
Q. 障害年金は受けられますか?
A. うつ病が長期化し、日常生活に著しい支障がある場合は、障害年金の対象になる可能性があります。初診日から1年6ヶ月経過後に申請でき、障害の程度によって1級〜3級に認定されます。
まとめ:うつ病の退職は使える制度をフル活用しよう
うつ病で退職する場合、正しい手順と制度を知っていれば、経済面の不安を大幅に軽減できます。
押さえるべき3つのポイントです。
- 傷病手当金:退職前に受給条件を満たし、退職後も継続受給する
- 失業保険の受給期間延長:療養中はハローワークで延長手続き
- 自立支援医療:通院費の自己負担を1割に軽減
一人で悩まず、厚生労働省「こころの耳」やまもろうよ こころに相談してください。キズキビジネスカレッジの失業保険解説も参考になります。



