失業保険について調べていると、「自己都合退職」と「会社都合退職」で扱いが大きく違うことに気づくはずです。退職理由の違いは、もらえる金額や期間だけでなく、受給開始のタイミングにまで影響します。
この記事では、自己都合退職と会社都合退職で失業保険がどう変わるのかを項目ごとに比較しながら解説します。「自分の退職は自己都合と会社都合のどちらになるのか」が分からない方も、判断基準を紹介しているのでぜひ参考にしてください。

自己都合退職と会社都合退職とは?
自己都合退職とは
自己都合退職とは、労働者自身の意思や事情で退職することです。転職のため、結婚・引っ越しのため、人間関係の悩み、やりたいことが見つかったなど、会社の責任ではなく自分の判断で辞めるケースが該当します。
会社都合退職とは
会社都合退職とは、会社側の事情で退職せざるを得なくなったケースです。具体的には倒産、リストラ(整理解雇)、退職勧奨に応じた場合、事業所の廃止などが該当します。失業保険上は「特定受給資格者」として扱われます。
特定理由離職者とは
自己都合退職でも、正当な理由がある場合は「特定理由離職者」として会社都合に近い扱いを受けられます。具体的には、契約期間満了で更新を希望したが更新されなかった場合や、体力の低下・障害・疾病などで退職した場合などが該当します。
自己都合と会社都合の違いを項目別に比較
違い1:給付制限期間
これが最も大きな違いです。
- 自己都合退職:7日間の待期期間 + 原則1ヶ月の給付制限(2025年4月改正後)
- 会社都合退職:7日間の待期期間のみ(給付制限なし)
2025年4月の雇用保険法改正で、自己都合退職の給付制限は従来の2ヶ月から1ヶ月に短縮されました。ただし、5年以内に3回以上自己都合退職をした場合は3ヶ月の給付制限がかかります。
違い2:所定給付日数
もらえる日数にも大きな差があります。
自己都合退職:年齢に関係なく、加入期間で決定
- 1年以上10年未満:90日
- 10年以上20年未満:120日
- 20年以上:150日
会社都合退職:年齢と加入期間の組み合わせで決定
- 最短:90日(30歳未満・1年以上5年未満)
- 最長:330日(45歳以上60歳未満・20年以上)
会社都合退職のほうが給付日数が多く設定されており、最大で180日分もの差が出ます。
違い3:受給に必要な加入期間
- 自己都合退職:離職日以前2年間に被保険者期間が通算12ヶ月以上
- 会社都合退職:離職日以前1年間に被保険者期間が通算6ヶ月以上
会社都合のほうが要件が緩く、短い加入期間でも受給できるようになっています。

自分の退職は自己都合?会社都合?判断基準
退職理由がどちらに分類されるかは、離職票に記載される「離職理由」で判断されます。しかし、会社が記載した退職理由と実際の事情が異なるケースは少なくありません。
会社都合になるケース
- 会社の倒産や事業所の廃止
- 解雇(整理解雇・懲戒解雇を除く普通解雇)
- 退職勧奨に応じた場合
- 労働条件が契約内容と著しく異なっていた場合
- 給与が大幅に減額された場合(85%未満に低下)
- 長時間労働が続いた場合(月45時間以上の残業が3ヶ月以上など)
- パワハラ・セクハラを受けて退職した場合
自己都合だけど会社都合に変更できるケース
離職票に「自己都合」と書かれていても、ハローワークに相談すれば会社都合に変更できるケースがあります。例えばパワハラが原因で退職した場合、証拠(メール・録音・日記など)を持ってハローワークの窓口で事情を説明すると、「特定受給資格者」に認定される可能性があります。
離職票の退職理由に異議がある場合は、ハローワークで「退職理由の異議申し立て」ができます。証拠があれば認められるケースも多いので、泣き寝入りせずに相談してみましょう。
退職代行を使った場合はどちらになる?
退職代行を使ったこと自体は、退職理由には影響しません。退職代行はあくまで退職の意思を伝える「手段」であって、退職「理由」ではないからです。
退職代行で辞めた場合でも、退職理由が自己都合であれば自己都合退職、会社側の問題(パワハラなど)が原因であれば会社都合退職として扱われます。弁護士型の退職代行を利用すれば、離職票の退職理由について会社と交渉してもらえるケースもあります。
総額でどのくらい差が出る?具体的なシミュレーション
月収30万円、35歳、勤続10年の方が退職した場合の比較です。
自己都合退職の場合
- 基本手当日額:約6,200円
- 所定給付日数:120日
- 給付制限:1ヶ月
- 総額:約74万4,000円
- 初回振込まで:約2ヶ月
会社都合退職の場合
- 基本手当日額:約6,200円
- 所定給付日数:210日
- 給付制限:なし
- 総額:約130万2,000円
- 初回振込まで:約5週間
同じ条件でも総額で約56万円の差が出ます。さらに受給開始のタイミングも1ヶ月近く異なるため、退職後の生活への影響は非常に大きいです。

パワハラが原因の退職を会社都合にする具体的な手順
パワハラが原因で退職した場合、適切な対応をすれば会社都合退職(特定受給資格者)として認められる可能性があります。具体的な手順は以下のとおりです。
手順1:在職中に証拠を集める
パワハラの証拠として有効なものは、上司からの暴言を録音したデータ、パワハラ的な内容のメールやLINEのスクリーンショット、日時と内容を記録した日記、医師の診断書(精神的な不調がある場合)などです。証拠がないと「言った・言わない」の水掛け論になりやすいので、退職を決める前から証拠集めを始めるのが理想です。
手順2:離職票の退職理由を確認する
離職票を受け取ったら、退職理由欄を確認します。会社が「自己都合」と記載していても、離職者欄で「異議あり」にチェックを入れることができます。
手順3:ハローワークで申し立てをする
証拠を持ってハローワークに相談し、退職理由の変更を申し立てます。ハローワークは会社側にも事情を確認したうえで、最終的な退職理由を判定します。認められれば特定受給資格者として扱われ、給付制限なし・給付日数も増えます。
退職代行(特に弁護士型)を利用する場合は、この退職理由の交渉も含めて依頼できるケースがあるので、事前に相談してみるとよいでしょう。
よくある質問Q&A
Q. 退職届を出したら自動的に自己都合になる?
退職届を出したからといって、自動的に自己都合退職になるわけではありません。退職の原因が会社側にある場合(パワハラ・長時間労働・給与未払いなど)は、退職届を出していても会社都合退職として認定される可能性があります。
Q. 懲戒解雇は会社都合?
懲戒解雇は会社からの解雇ですが、失業保険上は「重大な自己の責に帰すべき理由による解雇」として扱われ、自己都合退職よりも厳しい3ヶ月の給付制限がかかります。
Q. 退職勧奨を受けて辞めた場合は?
退職勧奨に応じて退職した場合は「会社都合退職」として扱われます。退職勧奨は会社側からの働きかけであるため、労働者の自由な意思による退職とは区別されます。
Q. 契約社員で雇い止めになった場合は?
契約更新を希望していたにもかかわらず更新されなかった場合は、「特定理由離職者」として会社都合に近い扱いを受けられます。給付制限なしで受給できる可能性があります。
Q. 早期退職制度に応募した場合は自己都合?会社都合?
会社が早期退職募集を行い、それに応募して退職した場合は「会社都合退職」として扱われます。早期退職制度は会社側の事情によるリストラの一環であるため、労働者側が手を挙げたとしても会社都合として認められるのが一般的です。ただし、制度の内容や状況によって判断が異なるケースもあるため、離職票の退職理由を確認し、不明な点があればハローワークで相談しましょう。
まとめ
自己都合退職と会社都合退職では、失業保険の条件が大きく異なります。
- 給付制限:自己都合は1ヶ月、会社都合はなし
- 給付日数:自己都合は最大150日、会社都合は最大330日
- 加入期間の要件:自己都合は12ヶ月以上、会社都合は6ヶ月以上
- 総額の差:同条件でも50万円以上の差が出ることも
離職票の退職理由が実際の事情と異なる場合は、ハローワークで異議を申し立てることが可能です。退職理由次第で受け取れる金額が大きく変わるので、自分の退職がどちらに該当するかをしっかり確認しておきましょう。
参考:厚生労働省 雇用保険制度


