「退職するなら、今まで払われなかった残業代も取り返したい」。そう考えるのは当然のことです。サービス残業やみなし残業の超過分など、未払い残業代を抱えたまま泣き寝入りする必要はありません。
ただし、退職代行サービスならどこでも残業代を請求できるわけではありません。サービスの運営元によって「できること」と「できないこと」が明確に分かれています。
この記事では、退職代行で残業代請求ができるケース・できないケース、具体的な請求の流れ、証拠の集め方まで詳しく解説します。未払い賃金を1円でも多く回収するために、ぜひ最後まで読んでください。

退職代行の種類と残業代請求の可否
退職代行サービスは、運営元によって3つの種類に分類されます。それぞれ残業代請求に対応できるかどうかが異なるので、まず確認しておきましょう。
民間企業の退職代行:残業代請求はNG
民間企業が運営する退職代行サービスは、退職の意思を会社に伝えることしかできません。残業代の請求は「交渉」にあたるため、弁護士法第72条(非弁行為の禁止)に抵触する可能性があります。民間企業の退職代行に残業代請求を依頼すると、違法行為になるリスクがあるので注意してください。
労働組合の退職代行:交渉は可能だが限界あり
労働組合が運営する退職代行は、団体交渉権に基づいて会社と交渉することができます。未払い残業代の支払いについて会社側に要求し、話し合いで解決を目指すことが可能です。
ただし、会社が交渉に応じない場合に訴訟を起こすことはできません。あくまで話し合いベースの交渉であり、法的な強制力には限界があります。
弁護士の退職代行:残業代請求に最も強い
弁護士が運営する退職代行は、残業代請求に最も適しています。法律のプロとして会社との交渉、内容証明郵便の送付、労働審判や訴訟の提起まで、すべて合法的に対応できます。未払い残業代の金額が大きい場合や、会社が支払いを拒否している場合は、弁護士型の退職代行を選ぶのがベストです。
| 運営元 | 残業代請求 | 交渉 | 訴訟対応 | 費用の目安 |
|---|---|---|---|---|
| 民間企業 | 不可 | 不可 | 不可 | 2〜3万円 |
| 労働組合 | 交渉可能 | 可能 | 不可 | 2.5〜3万円 |
| 弁護士 | 全面対応 | 可能 | 可能 | 5〜10万円 |
未払い残業代はいくら請求できるのか
「自分の未払い残業代がどのくらいあるのか見当がつかない」という方も多いでしょう。ここでは、残業代の計算方法と請求できる範囲について解説します。
残業代の基本的な計算方法
残業代は以下の計算式で算出されます。
残業代 = 1時間あたりの基礎賃金 × 残業時間 × 割増率
割増率は以下の通りです。
・時間外労働(1日8時間・週40時間超):25%増し
・深夜労働(22時〜5時):25%増し
・時間外+深夜:50%増し
・休日労働:35%増し
・月60時間超の時間外労働:50%増し
例えば、基礎賃金が時給換算で1,500円の人が月30時間のサービス残業をしていた場合、月あたりの未払い残業代は約56,250円(1,500円×30時間×1.25)になります。これが2年分なら約135万円、3年分なら約202万円にのぼります。
請求できる期間の時効
未払い残業代の請求権には時効があります。2020年4月の労働基準法改正により、賃金請求権の時効は「3年」に延長されました(改正前は2年)。つまり、過去3年分の未払い残業代を遡って請求できます。
ただし、時効は日々進行しているため、請求を先延ばしにするほど古い分から時効が成立して請求できる金額が減っていきます。未払い残業代があるなら、できるだけ早く行動することが大切です。
遅延損害金と付加金
未払い残業代には遅延損害金が加算されます。在職中の遅延利率は年3%、退職後は年14.6%です。さらに、裁判で会社の悪質性が認められた場合、裁判所が未払い額と同額の付加金の支払いを命じることがあります。つまり、未払い残業代100万円に対して付加金100万円が加わり、合計200万円の支払い命令が出る可能性もあるのです。
残業代請求に必要な証拠の集め方
残業代を請求するためには、「実際に残業をしていた」という証拠が不可欠です。退職代行を使う前に、できる限りの証拠を集めておきましょう。
最も有力な証拠
①タイムカード・勤怠記録のコピー
最も直接的な証拠です。スマホで写真を撮っておくだけでも有効です。出退勤の記録は会社に3年間の保管義務があるため、手元になくても会社に開示を求めることができます。
②PCのログイン・ログオフ記録
会社のPCの起動時刻・シャットダウン時刻は、労働時間の証拠として認められるケースが多いです。IT部門がログを管理している場合は、弁護士を通じて開示請求できます。
③業務メールの送受信時刻
深夜や休日に業務メールを送受信していれば、その時間帯に働いていた証拠になります。自分のメールの送信履歴を転送・スクリーンショットで保存しておきましょう。
補助的な証拠
④交通系ICカードの利用履歴
通勤に使っているSuicaやPASMOの利用履歴から、出社・退社の時刻を推定できます。駅の券売機で印字できるほか、モバイルアプリでも確認可能です。
⑤手書きの勤務メモ・日記
毎日の出社時刻と退社時刻を手書きでメモしていた場合、一定の証拠能力が認められます。日記やスケジュール帳に「23時退社」などと書いておくだけでも、立派な証拠になります。
⑥同僚の証言
一緒に残業していた同僚がいれば、証言を得られる可能性があります。ただし、同僚が会社に残っている場合は協力を得にくいことも多いです。

残業代請求の具体的な流れ
弁護士型の退職代行を利用して残業代を請求する場合の、一般的な流れを解説します。弁護士型の退職代行については以下の記事でおすすめを紹介しています。

STEP1:弁護士に相談・証拠の整理
まずは弁護士に相談し、手持ちの証拠を共有します。弁護士が証拠の内容を確認し、未払い残業代の概算金額を算出してくれます。この段階で「回収の見込みがあるかどうか」の判断がつきます。
STEP2:内容証明郵便で請求
弁護士が会社に対して内容証明郵便を送付し、未払い残業代の支払いを求めます。内容証明郵便は法的な証拠能力があり、「請求した」という事実を公式に残すことができます。多くの会社はこの段階で交渉のテーブルにつきます。
STEP3:会社との交渉
会社が支払いに応じる姿勢を見せれば、金額や支払い方法について交渉します。全額は難しくても、交渉によって一定額を回収できるケースが大半です。示談が成立すれば、合意書を交わして終了です。
STEP4:労働審判(交渉が決裂した場合)
交渉で合意に至らない場合は、労働審判を申し立てます。労働審判は裁判所で行われますが、通常の裁判よりもスピーディーで、原則3回以内の期日で結論が出ます。費用も訴訟より安く、解決までの期間は通常2〜3ヶ月程度です。
STEP5:訴訟(最終手段)
労働審判でも解決しない場合は、正式な訴訟に移行します。訴訟は6ヶ月〜1年程度かかることが多いですが、裁判所の判決には強制力があるため、最終的に支払いを強制できます。付加金が認められれば、請求額の2倍を回収できる可能性もあります。
残業代請求の費用と回収の目安
弁護士に残業代請求を依頼する場合の費用目安は以下の通りです。
| 費用項目 | 目安金額 |
|---|---|
| 着手金 | 0〜20万円(成功報酬型なら0円) |
| 成功報酬 | 回収額の20〜30% |
| 実費(通信費・印紙代等) | 1〜3万円 |
近年は着手金0円・完全成功報酬型の弁護士事務所が増えています。この場合、残業代を回収できなければ費用は実費のみで済むため、金銭的なリスクは小さいです。
回収の目安としては、証拠がしっかりしていれば交渉段階で請求額の60〜80%程度を回収できるケースが多いです。労働審判や訴訟に進んだ場合は、90〜100%+遅延損害金の回収が見込めます。
残業代請求の法的根拠については、厚生労働省の労働時間に関するページで詳しく確認できます。また、法テラス(日本司法支援センター)では、経済的に余裕がない方向けの無料法律相談も実施しています。
まとめ:残業代請求は「弁護士型」を選ぶのが鉄則
退職代行で残業代を請求するなら、弁護士が運営する退職代行を選ぶのが最も確実です。民間企業の退職代行では残業代請求ができず、労働組合型でも訴訟対応はできません。
残業代請求を成功させるポイントは以下の3つです。
①在職中にできるだけ多くの証拠を集める
②時効が進行する前にできるだけ早く行動する
③着手金0円の完全成功報酬型の弁護士を選ぶ
未払い残業代は、あなたが実際に働いた時間に対する正当な対価です。「どうせ取り返せない」と諦める前に、まずは弁護士型の退職代行に無料相談してみてください。証拠が少なくても、弁護士が会社に対して証拠の開示を求めることができます。退職と残業代回収を同時に進められるのが、弁護士型退職代行の最大のメリットです。


※この記事は2026年4月時点の情報をもとに作成しています。法律の改正や判例の変更により内容が変わる場合があるため、最新情報は弁護士にご確認ください。


